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しほうはっぽう

頭の整理や記録のため、本や映画など

「アイデアのつくり方」まとめ

昔の船乗りたちによると、海図の上では深い青海原しかないところに突如として美しい珊瑚が出現することになっている。あたりには不思議な魔法の気が漂っている。

イデアもこれと同じだと私は考えてきた。それは同じようにだしぬけに私たちの心の表面に現れてくる。同じような魔法の気に包まれて、同じような不可解さを伴って。(p.16)

「アイデア」は、それを外から見ている人間にとっては魔法も同然である。
その魔法を、仕組み化して捉えようとしたのがこの本だ。

アイデアのつくり方

アイデアのつくり方

 

しかし、この仕組み化は、例えばバイトのマニュアルのように方法をただトレースすれば答えにたどり着くようなものではない。これは、「心の訓練」の本である。

知っておくべき大切なことは(中略)すべてのアイデアが作りだされる方法に心を訓練する仕方であり、すべてのアイデアの源泉にある原理を把握する方法なのである。(p.27)

本書では、アイデア作成の方法を2つの原理と、5つの段階で説明している。

ここで作者のいう原理とは、以下の二つだ。

  1. イデアとは既存の要素の新しい組み合わせである
  2.  新しい組み合わせを作り出す才能は、事物の関連性を見つけ出す才能によって高められる。

ものごとの関連性を探ることは、違う出来事にも応用可能な総合的原理を見つけることに等しい。それによってできた新しい組み合わせがアイデアになる。

この「事物の関連性を探ろうとする心の習性」は、日々練磨することが可能であり、そのための有効な方法の一つが社会科学の勉強だ。短期的に役立つ断片的な知識が豊富でも、その原理を知らなければ知識はすぐ古びていく。

この原理をもとに、アイデアを作る方法を作者は心の技術の5つの段階と呼ぶ。

  1. 資料を収集する
  2. 資料を咀嚼し、意識の上で手を加える
  3. 問題を無意識に任せ、感性を刺激する
  4. イデアの誕生!
  5. イデアを現実社会に適合させるために具体化し、展開する

1. 資料を収集する

集める資料には、特殊資料一般資料の2種類がある。

特殊資料とは、売ろうとする商品とその対象となる消費者に関する資料のことである。 ここでも、第二の原理である「関連性」の力が生きてくる。

(他商品との)表面的な相違がほとんど目立たないような場合、そこには何ら相違点がないとすぐきめてしまう。しかし十分深く、あるいは遠くまで掘り下げていけばほとんどあらゆる場合、すべての製品とある種の消費者との間に、アイデアを生むかもしれない関係の特殊性が見つかるものなのだ。 

一般資料は、世の中のありとあらゆる知識のことであり、この量が増えれば増えるほど、組み合わせの分母が大きくなる。そのために必要な心構えを、筆者は以下のように述べている。

第一は(略)彼らが容易に興味を感じることのできないテーマはこの太陽の下には一つも存在しないということ。(略)第二に彼らはあらゆる方面のどんな知識でもむさぼり食う人間であったこと。

 

 2. 資料を咀嚼し、意識の上で手を加える

この段階は、集めた資料を使って、意識の上で考えられる組み合わせをすべて考えてみることである。この段階では、出てきた断片的なアイデアを否定せずにすべて書き留めておくことが重要である。しかし、ここでもまだアイデアは出てこない。

しかしやがて諸君は絶望状態に立ち至る。何もかもが諸君の心の中でごっちゃになって、どこからもはっきりした明察は生まれてこない。ここまでやってきた時、つまりまずパズルを組み合わせる努力を実際にやり遂げた時、諸君は第二段階を完了して第三段階に移る準備ができたことになる。

 

3. 問題を無意識に任せ、感性を刺激する

この段階では、問題を意識の外に移し、無意識の創造過程に身をまかせる。この段階で唯一できることは、無意識の創造過程を刺激するため、感情を揺さぶるものに見たり触れたりすることである。

 この段階は、 U理論に似ている。ただひたすらに観察し、あとは内なる叡智の出現を受け入れる。

 

4. アイデアの誕生!

どこからもアイデアは現れてこない。

それは、諸君がその到来を最も期待していない時ーーーひげを剃っている時とかお風呂に入っている時(略)に諸君を訪れてくる。 

 3までの段階がきちんと踏まれていれば、心の緊張がほぐれた時にアイデアはふと降りてくる。

 

5. アイデアを現実社会に適合させるために具体化し、展開する

この段階において諸君は生まれたばかりの可愛いアイデアをこの現実の世界の中に連れ出さねばならない。そうすると、この子供が、諸君が当初産み落とした時に思っていたような素晴らしい子供ではまるでないということに気づくのが常である。

実際、ここでそのまま失われていくアイデアは多い。ここでは、アイデアを自分だけで育てくるのではなく、理解ある人々に意見を仰ぐことで共に育てることが必要である。

良いアイデアというのは、いってみれば自分で成長する性質を持っているということに諸君は気づく。良いアイデアはそれを見る人々を刺激するので、その人々がこのアイデアに手をかしてくれるのだ。 

 

以上の原理と方法をまとめると、以下のようになる。

イデアは新しい組み合わせのことであり、それを見つけるためには、事物の関連性を見出す才能を磨き続けなければならない。

まずは資料を集める。短期的には、扱う商品と消費者の関係を、独自のものになるまで深堀ることと。長期的には、生涯に渡りありとあらゆる知識を蓄え、それを関連付ける訓練をしておくことが重要である。

次に、資料を咀嚼し、でてきたアイデアをすべて書き留める。考えられる組み合わせをすべて試し、やがて出口の見えないカオス状態が現れる。

その状態に陥ったら、問題を無意識に任せてリラックスすること。感性を刺激するものを見ることで、無意識下でのアイデアの醸成を待つ。

やがて、思いもよらないタイミングでイデアが降りてくる。

仕上げの段階では、イデアを具体化し、展開する。アイデアを他者に開示し、良いアイデアがそれ自体で持つ成長力に身を任せる。

 

ここまでをまとめてみて、何より重要なのは、第一段階の資料収集だと考える。一般資料の収集を常に怠らないこと。扱う事象の特徴が見えるまで、特殊資料の関連性を発掘すること。そのためには何より、「原理を見破る目」を養う必要がある。

「既存の事象の新しい組み合わせがアイデアだ!」という考えは間違っていないが、その組み合わせでできたアイデアの質には差が確実に存在している。推測するに、それはただ表面的な事象を組み合わせているか、根本にある関連性=原理を理解して当てはめているかの違いであろう。